人事SaaS銘柄6選:人材管理から勤怠までHRテックを紹介

労働力人口の減少と働き方の多様化、そして「人的資本経営」への移行。今、日本の企業は人事戦略の抜本的な見直しを迫られています。
こうした変化の波を乗りこなし、持続的な成長を遂げるために不可欠なのが、HR領域におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)。その中核を担うのが、クラウドを通じて提供されるHR SaaSです。
単なる業務効率化に留まらず、従業員一人ひとりの才能を開花させ、組織全体のエンゲージメントを高め、経営戦略と人事を結びつけるための強力なツールとして、その存在感を増しています。
本記事では活況を呈するHR SaaS市場において、独自の強みを発揮し、注目を集める複数の企業を深掘りします。
カオナビは、人材の可能性を深く理解し、同時に煩雑な業務プロセスから人々を解放することを目指し、人事領域におけるサービスを提供。その中核を成すのが、タレントマネジメントシステム「カオナビ」です。
このシステムは、従業員の個性や才能といった情報を一元化し、可視化することで、戦略的な人材配置や育成、さらには経営判断の迅速化を支援します。生成AIを活用した分析機能の導入など、技術革新にも積極的に取り組んでいる点が特徴です。
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近年、カオナビはマルチプロダクト戦略を加速させています。主力である「カオナビ」に加え、労務管理システム「ロウムメイト」、予実管理システム「ヨジツティクス」を市場に投入。
これにより、タレントマネジメントのみならず、労務、経営管理といった人事関連領域を幅広くカバーし、企業のデジタルトランスフォーメーションを包括的にサポートする体制を構築しています。
タレントマネジメントシステム市場において、同社は8年連続でシェアNo.1を獲得するなど、リーダーとしての地位を確立。4,000社を超える豊富な導入実績と、99%以上という高い継続利用率は、そのサービス品質と顧客からの信頼を物語っています。
同社は既存事業の深化と新規事業の育成、さらにはM&Aも視野に入れた戦略的な展開を進めています。
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ヒューマンテクノロジーズは、勤怠管理SaaS事業を主軸に、企業のバックオフィス業務全体の効率化を支援する企業です。
主力サービスである「KING OF TIME」は、クラウド型の勤怠管理システムとして、国内市場で高い認知度を誇ります。利用ID数ベースで10年連続No.1のシェアを獲得しています。
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同社は勤怠管理にとどまらず、人事労務、給与計算、電子契約、就業規則ナビといった新たなサービスを次々と展開。これにより、人事関連業務を包括的にサポートする体制の構築を進めています。
ヒューマンテクノロジーズの強みは、市場でのリーダーシップに加え、他社サービスとの連携を積極的に推進している点にあります。SmartHRやカオナビといった人事労務関連のサービスとの連携だけでなく、給与奉行クラウドなどの給与計算サービス、他にも他社の打刻サービスとの連携も可能としており、独自のHRエコシステムを形成しています。
また、導入・活用支援のための有償サポートや、データ分析機能の提供など、顧客体験の向上にも注力しています。
>クラウド勤怠管理『KING OF TIME』を展開、ヒューマンテクノロジーズが新規上場へ
ウォンテッドリーは、ビジネスSNS「Wantedly」を運営しています。同社が目指すのは、働くすべての人が仕事に没頭し、成長を実感できるような社会インフラの構築です。
事業の中核は、採用と従業員エンゲージメントの二つの領域にあります。採用領域では、企業文化やビジョンへの「共感」を軸としたマッチングサービス「Wantedly Visit」を提供。給与や条件だけでなく、やりがいや価値観の一致を重視する企業と求職者をつなぎます。
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近年では、採用プロセスの複雑化に対応するため、採用管理システム「Wantedly Hire」を市場に投入。候補者情報の一元管理や日程調整の効率化を図り、採用担当者の負担軽減とミスマッチの防止に貢献します。
また、従業員の定着と活躍を支援する「Engagement Suite」も展開。福利厚生「Perk」、チームマネジメント「Pulse」、オンライン社内報「Story」を通じて、組織の活性化とエンゲージメント向上を後押し。個人のスキルの種類や希少性を診断して、自己理解を深める「Wantedly Assessment」も提供し、個人のキャリア自律を支援しています。
400万人を超える国内ユーザー基盤と、採用から定着まで一貫してサポートできるプロダクト群が同社の強み。HR Tech市場が拡大する中、「共感」という独自の切り口で、人と組織の新たな関係性を築いています。
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スタメンは、企業成長の鍵が「人と組織」にあるとの信念に基づき、テクノロジーを駆使したソリューションを提供しています。
事業の中心を担うのは、エンゲージメントプラットフォーム「TUNAG(ツナグ)」です。これは、単なる機能提供にとどまらない、複合型の組織改善プラットフォーム。企業ごとに異なる組織課題に対し、社内制度の設計から運用、改善までを一気通貫でサポートできる点が最大の特徴です。
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高いカスタマイズ性と、カスタマーサクセスによる伴走支援により、顧客の組織エンゲージメント向上に貢献。99%という高い継続率を誇り、ユーザー数は100万を突破するなど、市場で確かな支持を獲得。飲食、小売、物流など幅広い業種への導入が進んでいます。
もう一つの柱である「FANTS」は、コミュニティ運営に必要な機能をワンストップで提供するクラウドサービスであり、事業の多角化にも取り組んでいます。
人的資本経営への関心が高まる中、スタメンは独自の複合型アプローチで、組織の課題解決に貢献することを目指しています。
>継続率99%のエンゲージメントSaaSで絶好調 スタメンの成長戦略を解剖
チームスピリットは、労働力不足という社会課題に取り組むSaaS企業です。同社は、人的資本の生産性向上を実現するため、Salesforceプラットフォームを基盤としたクラウドサービスを提供しています。
主力製品「チームスピリット」シリーズは、勤怠管理、工数管理、経費精算といったバックオフィス業務のDXを支援。これに留まらず、採用や評価、データ分析機能なども含め、企業の人的資本経営を多角的にサポートします。
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特に、日本の複雑な労働基準法への対応力と、勤怠管理というミッションクリティカル(業務遂行に不可欠な)領域に特化している点が強み。また、中堅以上の導入企業ではライセンス数の多さから、一度導入されると解約されにくく、安定した事業基盤を築いています。
また、同社はエンタープライズ市場に注力しており、大企業特有の要件に対応する「TeamSpirit EX」や、SAP社との協業を通じて、市場へのアプローチを行っています。
Salesforce AppExchangeでの評価や、50万を超える利用ユーザー数は、その実績の一つです。チームスピリットは、強力なパートナーシップと製品力で、企業の生産性向上への貢献を目指しています。
>「チームスピリット」3Q20決算:顧客獲得が減速、中期の成長イメージを見直しへ
ポーターズは、人材紹介・派遣業界という特定の分野に深く根差したバーティカルSaaS企業です。20年以上にわたり、人材マッチングの現場を支える総合管理システム「PORTERS」シリーズを提供し、HR業界のDXを牽引してきました。
同社のサービスの核は、人材紹介向けの「PORTERS AGENT」と人材派遣向けの「PORTERS STAFFING」です。これらは、求職者と求人企業のマッチングプロセスを一元管理し、業務効率化を実現します。
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特に、顧客自身が業務に合わせて自由にカスタマイズできる柔軟性と、人材業界特有の複雑な法令や業務フローへの深い理解が評価されています。800社を超える顧客基盤と、現場での使いやすさを追求する製販一体体制が、その強みを支えます。
またポーターズは未来に向けた投資も行っており、応募管理システム「PORTERS SAISOKU」や、自社開発AIを活用した「PORTERS-Assist」を投入し、スカウト代行市場など新たな領域への挑戦を開始しました。
ポーターズは、長年培った業界知見と技術力を活かし、HR業界の発展に貢献することを目指しています。